2.学習ゲーム研究会 メルマガ寄稿文

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<論文>「さあ、文字を<描いて>みよう!」
〜にほんごアートで実践する楽しい語彙・漢字導入〜
内田クツロフ雪絵
(にほんごアートコンテスト実行委員長)
<nihongoart@yahoo.co.jp>
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■問題
筆者は現在、カナダで日本語学習歴の浅い中高校生に、(外国語として)日本語を教
えている。ひらがな導入から始めて、語彙の習得・文法学習と進んでいくが、文字アレ
ルギーから消化不良を起こして、学習意欲が低減してしまう生徒が少なからず存在す
る。文字を習得しなければ、教科書がわからず、ノートもとれない。また、最低レベ
ルの語彙がないと、文型学習にはずみがつかない。そこで、日本語の本来の魅力であ
る多様な文字により親しみを持ち、コアとなる語彙の構築を容易にする手法がないか
 と日々考えていた。
■方法
 そこで考案したのが、<にほんごアート>である。ひらがな単語や漢字を絵で表現す
るもので、学習者の日本語運用能力によらず、楽しく参加できる。ひらがな一文字一文
字を絵と発音の組み合わせで表現を試みた日本語学習教材はあるが、英語版スペイン語
版など、学習者の母語によったものであった。
(例)<い>はHAWAIIの<II>の部分の発音と文字の形状が似ていることを利用して、
   「<い>はハワイの<い>」と覚えるなど。
 にほんごアートは、意味を完全に絵で表現するので、学習者の母語や能力によらずア
プローチでき、かつ、日本人と外国人の垣根さえも飛び超えてしまう画期的なアイディ
アである。漢字を絵で表現する手法は以前からあったが、ひらがな単語でチャレンジし
た教師は筆者が初めてである。
 また、<にほんごアート>は筆者の造語である。
■サンプル画の配信
 筆者のホームページに<にほんごアートギャラリー>を設け、現在80点の自作品を
公開している。
■にほんごアートのねらい
  以下、4つを学習のねらいとする。
 クラス活動であることを念頭に起き、個々の取り組みが、クラス全体に貢献するこ
とを大きなねらいとする。
1.日本語のできる子できない子全員が楽しく参加する
  ⇒テスト・競争にしない
2.クラスメートの作成物に興味を持って接する機会を与える
  ⇒スピーチや作文では、学習者は他者の作業に注目しない
3.作成物は、教材として授業で活用する
  ⇒作ってハイ終わり、の作業に終わらせない
4.連想記憶を働かせ、ひらがな単語や漢字の定着を図る
   ⇒機械的な暗記に陥らせない
■活動の流れ
 筆者のクラス全員(当時、日本語学習歴一ヶ月から2年程度)に、サンクスギビング
デー(4連休)の宿題として、実施した。
(1)思考期ー2週間前より、サンプル画を見せ、にほんごアートのコンセプトを浸透さ
    せた。
(2)実践期ー単語や漢字は、自由に生徒に選ばせた。各人3点
(3)評価期ー提出後、学内展覧会を主催し、生徒に投票をさせて、入賞作品を決定した。
    その際、教師は審査に参加しなかった。
   具体的には、無記名で掲示された作品から生徒一人あたり五点の優秀作品を選んで
    もらった。景品欲しさに自分に投票したり、親しい友人に投票したりするのではな
    いか、と懸念もしたが、あえて生徒の自主性にまかせた。結果、公平な審査が保た
    れていたように感じた。
(4)使用期ー現在も、授業中に作品をフラッシュカードとして活用したり、教室内に掲示し
   たりしている。
■生徒に与える効果
(1)思考期がもっとも文字への関心が高まる時期である。学習者はどの漢字どの単語を選択
   しようか、いろいろ迷いながら、自然と文字の字形に注目する。
⇒暗記の対象物だった単語や文字が、創造活動のパーツに変身することで、開放感をもって
  観察する対象物に変化する。
(2)選択した単語や漢字に愛着がわき、長く忘れられないものになる。
⇒確実な知識のコアを形成する
(3)評価を生徒に委ねることで、生徒は全作品に注視する。
⇒笑いの渦の中で鑑賞、文字アレルギーから脱却する
(4)実際には、作品物の単語や漢字を生徒はすべて暗記してしまっているので、現在はクラス
   の盛り上げ役として活躍。
⇒知識のコアがふくらみ、定着する
■にほんごアートコンテスト2004開催
 にほんごアートを広く推進するため、筆者が実行委員長となり、カナダオンタリオ州で、<
  にほんごアートコンテスト2004>を開催することになった。
 国際交流基金トロント日本文化センターとの共催事業であり、オンタリオ州で日本語を勉強
  する小学1年生から高校3年生までを対象とした、大規模なコンテストになる予定である。
 日本語の優劣を競うものではなく、全員の楽しい参加を目標とするコンテストである。また、
  広大なカナダでは1箇所で行う展覧会は多くの生徒の来場が望めないため、出品作品をみんな
  で共有できるよう、<巡廻展覧会>を企画する。
 巡廻展覧会とは、参加校に出品作品を回覧していくシステムのことで、参加者全員が同じく日
  本語を勉強する仲間の作品に触発されることを目的とする。
 コンテスト参加は出品をもって終わりとせず、それを始まりと考え、小さな努力の結晶をまと
  め、教室に送り返し、学習に大きく貢献するよう配慮する。
■今後の課題
 現状までの実践の過程で、とくに大きな混乱はなかったが、以下3点を今後の課題としたい。
(1)カタカナと擬声語擬態語の表現方法
 現状のにほんごアートはひらがな単語と漢字のみで、カタカナがない。カタカナ単語は、英語圏
  の学習者にとっては、カタカナが読めれば意味を類推できてしまうため、意味を絵で表現する効
  果が希薄となるからだ。反面、カタカナ自体は外国人学習者にあまり定着していないのも事実で
  ある。
 そこで、擬声語擬態語を視覚的に表現する方法を摸索することで、新たなにほんごアート部門を
  創設し、かつカタカナもここに収斂させたいと考えている。今後、タイポグラフィーと擬声語擬
  態語の意味をミックスさせ、絵で表現することを試みたい。
(2)形容詞、動詞の表現方法
 現状のひらがな単語の作品は名詞のみである。今後、形容詞や動詞なども絵で表現することを試
  みたい。
(3)知的国際交流としての<にほんごアート>
 にほんごアートの最大の特徴は、誰でも気軽に参加できることにある。日本語母語話者非母語話者
  によらないので、日本の児童生徒とカナダの学習者が同じ土俵で、楽しむことが可能である。多く
  の参加を呼びかけることで、作品数も倍増する。
 にほんごアートを通じた知的国際交流が可能になるよう、日本国内での提携校、参加クラスを募集
  していきたいと考えている。
(興味のある先生は、是非ご連絡ください。)
■終わりに
 英語圏の子供にとって、日本語の学習機会は非常に貴重である。言語学的に違ったしくみをとる日本
  語学習を通じて、学習者が学べる要素は多岐にわたる。将来、日本語を使う必要性の有無を問わず、
  日本語教育は、広く世界に浸透していくべきものだ、と筆者は考える。日本語を一部のエリート生徒
  のものではなく、すべての生徒のものにしていくために、つねに楽しい授業のあり方を追求したい。
                      

他の資料

1.カナダ日本語教育振興会2004年度年次大会発表要旨
3.お笑い教師同盟(仮)メルマガ配信文
4.2003在外邦人日本語教師研修に関する口頭報告
5.にほんごアートコンテスト2004の作品分析
6.イベントに関するアンケート調査結果(20050213実施)

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